日本篆刻家協会 40周年記念

日本篆刻家協会40周年記念 『梅舒適墨』 について

理事長 真鍋 井蛙

 この度、日本篆刻展が40回記念展を迎えるにあたり、奈良の製墨メーカーである株式会社呉竹より記念墨造墨のご提案を頂きました。企画委員会で協議を重ね予算との兼ね合いも考慮し、また呉竹様のご協力も頂戴し実現する運びとなりました。墨の表面には梅舒適先生の印影を施し、裏面には活字で日本篆刻家協会と入れる事にし、役員の承認後詳細については後日呉竹を訪問し決定する事としました。

 令和6年2月20日(火)曇天。お昼過ぎに見慣れた近鉄奈良駅に到着、待ち合わせてお迎えの車に乗車し呉竹本社に向かいます。途中、呉竹の筆ペン工場や大きな物流センターの建物を通り抜けた先の本社に到着、この場所で固形墨や液体墨が作られていました。2階の会議室に通されて、まずは記念墨の打ち合わせを開始、企画のメンバー含め4名で対応を頂きました。きめ細かい説明を頂きながら、桐箱の種類、墨の向き、説明書の大きさから折り方まで詳細部分を確認しながら決定していきました。そうこうしていると墨の型入れ工程作業は、本来午前中で終了のはずが、時間を延ばして待ってくれているという事で商談を中断し墨工場に案内していただきました。墨は冬場しか作れないという事で、貴重な体験になりました。

 工場に入るなり墨の香りで包まれます。まず案内されたのは木型彫刻職人の部屋でした。今や彫刻師は日本で三名しか居らず、そのうちの一名が呉竹に在籍しており、1mm以下の細かい部分をお手製の刃物道具を用いた繊細な集中力を要する仕事に向き合われていました。筆遣いをいかに表現するか、また図柄をいかに忠実に立体的に墨に写せる木型に仕上げるかが腕の見せどころとの事。素晴らしい。何時間でも見ていられそう。

 次に型入れの部屋へ。先の木型を使用し煤と膠を練ったものを一つ型に合わせた大きさにちぎり手で練り直し木型に入れてプレスします。この熟練した型入れ職人練りにより墨の品質に影響を及ぼします。真っ黒になり仕事に打ち込まれている姿と技術に感動すら覚えました。ちょうど、我々の日本篆刻家協会の記念墨を型入れされている最中で、まさにその型入れの瞬間に立ち会える事ができました。またここでは握り墨を体験させて頂きました。木型に入れる前の柔らかい墨玉を手のひらに乗せてギュッと握ります。そうすると手形の墨の出来上がりです。1ヶ月ほどで水分が抜け墨が完成するとのこと。1か月後、楽しみが一つ増えました。そのあと、墨の乾燥工程の部屋、バリ取りと彩色の部屋を廻り、丁寧な説明をしていただきました。40分ほど工場内を案内頂きました。

 墨づくりの工程見学を終え、2階の会議室に戻り、再度墨の包装やのし紙、また桐箱にはる天貼り(表題)等必要事項を決めていきます。一部先生方に確認する事項は持ち帰らせて頂く事とし、納期がある中で今決めておくべき事のお役目は果たさせていただいたと思います。

 いずれにしましても今回墨づくりの現場を拝見させて頂き、改めて墨にかかわる職人のひたむきさ大変さを知り、また手元に届くまでの多くの作業工程と時間を要する事、さらに相当の準備が必要である事を認識した次第でもあります。それ故、今回の40回記念展の記念品として真にふさわしいと確信し、帰路につきました。

 協会の会員の皆様、楽しみにしていてください。

 お世話になりました呉竹様ご一同様には、深く感謝申し上げます。

『梅舒適墨』

 

お知らせ

『梅舒適墨』につきましては、

 2024年6月1日の第40回記念展の祝賀懇親会ご参加の方に配布をさせて頂きます。

 ぜひ皆様のご参加をお待ちしております。